CHILD LIBRARY 子どもライブラリー

「味わい」

「味わい」を経験するには時間がかかります。経験も時間も必要ないのは、単純に刺激的なこと。アミューズメント施設のパフォーマンスは、この類です。何の資格も条件もいらず、誰でも屈託なく笑えて楽しめます。
運動会の「味わい」のことを考えます。9月29日に、和歌山のこども園で運動会をしてきました。創立4年目です。私は、子どもを見せ物にして、親を喜ばせる競技を嫌いますので、内容は子どもライブラリーと同じ地味なものばかりです。
はじめの2年間ぐらいは、刺激が足りないので、「見ていてつまらない」と、会場の空気はよそよそしく、冷たかったです。和歌山でも、他の地域を同じく、賑やかで華やかな子どもの演奏などが多くあります。「味わい」を求められるような、地味な競技を見せられてもなかなか受け入れることはできません。その頃は、全体をまとめるのがとてもむつかしかったです。
今年は、一歩前進でした。保護者も協力的で、見るべきものを見て、聞くべきことを聞いていただけたので、やりやすかったです。派手さはなくても、一本見えない芯が通っていて、子どもが安心して迷うことなく取り組んでいる姿に、会場はほのぼのとしていました。小さな子ども達のがんばりや、子どもどうしの何気ないかかわりや、ひとつひとつの競技の意味と、小道具の出来具合など、丁寧にたどることができるさわやかさがありました。よく見ると、「なるほどこういうことか」「そうか、こうなっているのか」「ふ〜ん、やるもんだね」「そんなことまで・・・」と、納得したり予期せぬことに驚いたり、感動したり・・・それが「味わい」につながっていきます。
しかし、それにはやっぱり時間がかかります。また、行事だけではそこには届かない。子どものことをいつも考える柔軟性。日々の保育をダイナミックに積み上げる計画性。うまくいってもいかなくてもきちんと総括して、前にすすんでいく心の強さ。そんなことがあって見えてくる、聞えてくる領域だと思います。

私は、和歌山の子ども園の運動会が終わった昼すぎに、職員に言いました。「まだまだだねえ。でも、君達の目指している方向は、間違っていません。そのことの結果が、保護者席に感じられました。最初のころを思い出すと、その違いがうれしかったです。よくがんばりました。次を目指してください。」(そう言えば、こんな風におだやかに、子どもライブラリーの職員をほめたことがないな〜と、ちょっと反省しながら話していました。ライブラリーは、ホームですから、ついつい厳しくなってしまいます。)

子どもライブラリーの運動会も間もなくです。ワイワイと賑やかに楽しく、メチャクチャ盛り上がる運動会にしましょう。でも、一過性のお楽しみにはならないで、「味わい」がそこに感じられて、「なるほど」と合点して、安心できる。そのような場面を、みなさんと是非共有したいです。
全国でいろいろな園の先生達が、子どもライブラリーの子育てと運動会を目標にしています。それにこたえられるような行事にしたいと思います。

2013/10/10