CHILD LIBRARY 子どもライブラリー

「子どもライブラリーってどんなところ?」

今月のカナカナ通信の特集は、「子どもライブラリーってどんなところ?」となっています。

カナカナ通信創刊以来、約30年繰り返し問われてきたこのテーマは、永遠に答えの出ない謎のようです。

 

今年の卒園生の新聞「キ・オ・ラ」に、長く子どもライブラリーに勤め、現在は「加古川こども園」の園長である春名由美子氏が、「ライブラリーの変わらない良さ?」について問われて、とても上手にひとことで子どもライブラリーの本質を言い当てていました。即ち、「何年経っても変わり続けることが、変わらないところ」。

これは、「至言」と言えます。多くの「伝統」や「らしさ」というのは、「変わらないこと」を求められます。また、後に続く者達にそれらを守り続けることが期待されます。

ところが、「変わらない良さは何ですか?」と問われて、「変わり続けることが、変わらない良さ」となると、これは厄介です。

これを額面通りに受け取ると、何でもありの無秩序に迷い込んでしまいます。また、時代の流れに迎合するだけの主体性のない風見鶏のようにもなってしまいます。

皆さんご存知のように、子どもライブラリーは無秩序どころか、教育・保育の意味において、やるべきこと、するべきことが、厳格にはっきりとしています。

さらに、その時代が、世間が求める子どもの育て方というより、普遍的な子どもの育ちをしっかりと見つめ、支援するというこだわりを強く持っています。

 

「そんな風に言われるとますます子どもライブラリーのことがわからない」と、戸惑いの声が聞こえてきます。そこで、皆さんに納得していただけるように、私なりに子どもライブラリーを説明できるいくつかのキーワードを探してみました。紹介します。

 

《キーワード① 「つながり」》

園と子ども、園と親、先生と子ども、先生と親というようにつながりの線は、単純に一本ではなく、何本も何重にもあります。また、それは全体ということでもあれば、クラス、チーム、そして個人という意味でもあります。

「つながり」は、園を離れても存在します。時を越えて生き続けます。

そして、「つながり」は、双方向の関係によって強化されます。

双方向というのは、教える側、教えられる側というのでなく、お互いの対等の学び合いの関係の中で成り立ちます。そして、その根底にあるのは、「リスペクト」(尊敬)です。

私達は、常に「健気に生きる子ども」に尊敬の念を持ち続けています。そして、その子ども達を自己犠牲を包括して育てようとする親を「すごい力技」として認め、肯定します。

目に見えない祈りのような「リスペクト」の念に支えられて、何年も何世代も「つながり」が維持され続けています。この「つながり」こそが、子どもライブラリーの誇れる伝統のひとつと信じています。

 

《キーワード② 「生きる」》

今日を生きる、明日を生きる、楽しく生きる、元気に生きる・・・といろいろな「生きる」があります。子どもライブラリーも、子ども達のポジティブな生きるをうんと応援する立場にあります。

しかし、「生きる」ことには、ポジティブなことばかりでなく、ネガティブなこともたくさん起こります。悲しい出来事。つらい苦しい想い。迷い、悩み、葛藤、恨み、憎しみ・・・などの感情体験。

子どもライブラリーの「生きる」は、それらを全部含めます。物事には、鏡の裏表のように全く逆の考え方があります。人の気持ちは陰と陽、光と陰のように複雑に、時と場所に応じて変化します。それもこれも、すべて生きている証です。

私達は、それらを経験することで身に付く健全にバランスのとれた人格こそが大切と考えています。

ネガティブな経験は、ポジティブな経験をより豊かにしてくれます。逃げることなく、否定することなく、全てを丸ごと受け入れる「生きる」、を体験できるような日々を創り出したいと思います。

 

《キーワードの最後に「わたし」を挙げます》

「私らしく生きる」とよく言われます。大切なことですが、なかなかそんな風に簡単に生きることはできないものです。いろいろな人、場所、条件によって、個人は縛られています。言いたいことがあっても、気を使って言えない、したいことがあっても忖度してできない・・・などの例は、枚挙にいとまがありません。

しかし、そうやってまみれながら「わたし」をつくりあげてほしいと、願っています。

「わたしをつくる」というのは「わたしがわかる」ということです。「わたしがわかったぶんだけ相手がわかる」と考えられます。そして、そんな自己実現を目指して、まみれて、努力する子どもを育てたいと思います。相手や物のせいにせず、「わたしのわかったぶん」を常に検証する。そこから、次の知恵が生まれます。小賢しく、わずかばかりを知っている子どもより、知恵を磨く子どもが好きです。

子どもライブラリーの知識、技術に偏るより、生きる力を優先する教育・保育の本質がここにあります。

 

さて、「子どもライブラリーってどんなところ?」について、3つのキーワードを挙げました。

「ちょっとわかった」という方もあれば、「ますますわからん」という方もあるでしょう。カナカナ通信の後半に、先生達が園の特徴をまとめてくれました。そちらを読んでいただければ、より具体的にわかると思います。

まぁ、ここまで書いて、私は簡単にまとめると、『「変わりつづける」ことを説明するのはやたらむつかしい』ということでした。時の全体を俯瞰して、言い表す言葉が見つかりません。

力不足で残念!!努力します。

 

以下の内容については、7月のカナカナ学習会で説明補足します。

 

=子育てについて(保護者からの質問)=

①『がんばるばかりでは苦しい。どうやって手を抜いたらいいのですか?』

②『子どもの観察ってどうやってするの?』

③『ライブラリー生活をしていく中での親の心構えは?』

④『感情的にならないコツはなんですか?』

⑤『「子どもに任せる」ということは、どのように実践すればよいのか?』

⑥『自己主張とわがままの見極めがむずかしい・急いでいる時はどうすれば良いのか?』

2019/07/18