CHILD LIBRARY 子どもライブラリー

夏の終わりに

夏の終わりに

 

暑い夏もそろそろ勢いを緩めて、涼しい朝夕の風に入れ替わる頃となりました。ご家族の皆様、夏休みはどのように過ごされたでしょう。休み明けの朝、くまのこ組の子どもたちの歌声が聞こえてきました。なんとまあ、みんなバラバラで、音もいろいろ、歌詞を忘れて、曲はアップダウンして揺れていました。しかし、それはそれで可愛く、新鮮でした。子どもたちも久しぶりにみんなでうたうことを喜んでいたのでしょう。上手ではないけれど、うれしそうな歌声でした。夏を越えて、子どもたちは確実にたくましくなります。11月の保育参観の頃に聞こえてくるクワイアズは、きれいですよ。素直に自分らしく成長した子どもたちひとりひとりのまとまりのある歌声は、迫力もあります。1回ずつ形に残らない歌声にも、子どもの育ちのプロセスと、私たちの保育の形が現れていて、興味深いです。

私は、24回目のニュージーランド学校訪問を終えて、すぐに広島の講演会に招かれていました。2日間で、中四国から、750名もの先生たちが広島の海のリゾートホテルに来られていました。私の前は、テレビで有名な脳科学者、茂木健一郎さん。私は、最後にお話させていただきました。大きな講演会はお祭りのようなものですから、特別なことはないのですが、私は、今回、広島駅からホテルまで送って頂いたハイヤーの専属運転手のことがとても印象に残りました。
70歳前後の彼は、きちんと身なりを整えて、私のカバンをもち、車のドアを開けてくれました。言葉づかいはとても丁寧でしたが、決してよそよそしくはありません。私が広島のことを聞くまで何もしゃべらず、質問には的確に、そして次に私が知りたがるだろうと思われることをさりげなく付け加えます。広島は、日本中、世界中の人がいろいろな思いを持って訪問するところです。さぞ、今まで多くの日本人、外国人を乗せて、運転されたのでしょう。経歴の厚みを感じさせる物腰の柔らかい運転手でした。最後に彼は、「広島はいいところですよ」と、にっこり笑って、乗った時と同じように私をていねいに降ろしてくれました。ひとつの道を極めてこられた品の良さが残りました。

講演会の後のサイン会で、中年の女性に声をかけられました。私がニュージーランドから姫路に来るkiwiのグループの「ヒロシマ訪問」(彼ら非核の国の学生は、毎回必ず広島の原爆メモリアルホールを表敬訪問します。)の時に、通訳と案内でお世話になっている女性のお姉さんでした。(私は、声を掛けられて気付き、初めてお会いしました。)そのほかにも、私のことを知っている、私の本を読んだ、という方々に何人もお会いして、うれしかったです。自分の好きなことをして、まわりのことをよく見ないで、駆け抜けるような毎日ですが、たくさんの人が気にかけてくれているのだと思うと、身の引き締まる思いです。今週には、倉敷の大原美術館の理事長の伝統ある施設に、講演を頼まれています。まじめにきちんと期待にこたえられるように準備して行きたいと思います。
今夏は、いつもと変わらず、暑く、あわただしい毎日ですが、いろいろな振り返りを得た特別なものとなりました。そのことについては、もう少し詳しくカナカナ学習会でお話します。

2011/09/07