CHILD LIBRARY 子どもライブラリー

「一日だけのファンタジー」

「運動会って何だ?」と、問われた時、どんなイメージを持つでしょうか? イメージは、自分の見たこと、聞いたこと、読んだこと、体験したことなどが、混ざり合ってできあがります。しかし、それだけでは自信がなく、ボンヤリとしているものです。それを確かなものになるためには、他の人のイメージとつながり合う、重なり合うことが必要です。多くの人と出会って、つながり合い、重なり合いが増えれば増えるほど、強いイメージができあがります。

ところで、「運動会って何だ?」を考えた時、私達はみんなとつながり、重なり合っている古くて強いイメージに捉われて、それが「運動会」だと思い込んだまま引っぱられているということはないでしょうか。

多くの人と「運動会」を共有できることはうれしいのですが、安心できるイメージ先行では、そこに今日を生きている子どもの姿はありません。毎日子育てをしているそれぞれの家族の有様は、反映されていません。今年の私のクラスの子ども理解は生かされていません。

 

子どもライブラリーは、「イメージに依存する行事はやめよう」と思います。勝手に作られたイメージにしばられないで、今年の子ども、家族、先生集団で新しいものを生み出そうと考えます。おそらくイメージできることをなぞって、昨年と同じような運動会にする方が無難で簡単だと思います。新しいものを作り出すのには、客観的な情報と、とても大きなエネルギーが必要ですから・・・。

 

それでも、チャレンジする価値はあります。まず、決められたことを押しつけるのでなく、今年の子ども達と作り上げることで、子ども主人公という主体性が育ちます。また、保護者の「不思議感」が盛り上がり、共に参加することで家族の会話が豊かになります。さらに、園や先生にとっては、アイデア、入場門、道具類など、知見、経験の積み重ね、技術の向上が見られます。そして何より、大人も子どももみんながワクワクドキドキできる楽しみが増えます。

 

「運動会って何だ?」と考えた時、答えはないと思います。そうなると、それは最早運動会ではないのかもしれません。まぁ、ネーミングはともかく、ひとつの型はありますが、型を超えて、型にとらわれないで、自由になると、いろいろと「不思議な世界」を生み出すことができるようです。

皆さんご存じの「不思議の国のアリス」は、異次元・別世界のファンタジーです。そして、子どもライブラリーの運動会は、生活をふまえた、しかも家族というとても古くて、新しい永遠のつながりを基調とした、現実世界のファンタジーでした。

さらに、「アリス・ワンダーランド」は、うさぎを追いかけるところから始まり、別世界ではいろいろ異形のキャラクターが登場します。でも、子どもライブラリーの運動会ファンタジーは、夕暮れの前夜祭に集まるところから始まり、皆さん家族全員が登場人物であり、主人公でした。また、遠くに住んでいる祖父母もあちこちにあらわれました。

物語の始まりでいきなり前に走り後ろに走り、両手を挙げしゃがんで立ってと、大混乱。暗くなって家へ帰ると、「体操これであってるかな?」と、夜は家族全員でおさらい。当日は「ドキドキしますね」と、昨夕知り合ったばかりの人達と気持ちを共有、共感。ひとつの競技が終わって退場すると、そのまますぐに次の出番で入場門へ。気が付くと、最後のマイムマイム。あっという間のファンタジーでした。

おもしろかったですね。愉快だったですね。思い出しても見どころ満載でした。どの場面を切り取っても笑えます。感動します。

すべては、今年の子ども達、家族の皆さん、そして舞台裏で入場門から準備して、作り上げてきた先生達の力の結集でした。もうこれは、運動会とは呼べないかもしれません。「みんなで作り上げた、一日だけのファンタジー」と呼びましょう。

 

それでも、子どもライブラリーは教育・保育の現場です。運動会にどんなねらいがあったのか? ひとりひとりの子どもにどんな力が育ったのか? それは今後どうなっていくのか? このあたりは、しっかりとカナカナ学習会で説明しておきたいと思います。

ファンタジーをファンタジーで終わらせないために、11月2日ご出席下さい。

2019/11/11