CHILD LIBRARY 子どもライブラリー

父親学習会の顛末

父親学習会は、子どもライブラリーのユニークな行事のひとつだ。今年も48名の参加者。雨上がりの朝9:00にみんな集まって、軽トラックとサッカーゴールや木のテーブルを障害物にして、ゴムのボールを投げ合う。いわゆる「雪合戦」の要領だが、これはなかなか盛り上がる。

ボールがヒットして得意気な顔。どこかにあてられた感覚にちょっと気まずくコートを出る顔。ムキになる顔。ひたすら逃げる顔。コート外で見ている母と子どもは、どの顔もどのシーンもおもしろい。3回戦マッチ。素早くコートチェンジ。集めるボール。とられるボール。トーナメントの結果いちべえ組父親の勝利。喜びの集合写真。

続いてハンター。逃げる。追いかける。再び逃げる。疲れて追いかけられない。足がもつれて転ぶ。応援の母と子は笑い転げる。

 

ひと汗、ふた汗のあと、2階の教具室で全体会となった。息を整えて、感想を聞く。初めての人、5回目の人、と様々だが、すぐ隣りの見知らぬ人の話を聞く。たった15分前には同じあそびをしていた仲間。不思議と親近感がある。話題に共感できる。

「あそぶって友達ができるんですね。」は、十数年前にゲーム終了時につぶやいたある父親の名文句だ。

 

さて、私は全体会の最初に、2つの男性の視点を話した。

まず、「男は理屈っぽい。 ⇒ 法律、規制、常識、道徳などに依拠して、バリアを構築して仕事をしている。失敗しないように自分を守っている。最後の決め台詞は

“そんなことで世の中で通るか‼”。」

次に、「男は人見知り。社会性に乏しい。⇒自分の身の回りの人としか付き合えない。業種が同じでないとコミュニケーションできない。言葉が通じない。概念を共有できない。最後に壁を高くして“オレは普通だが、あいつは変わってる‼”。」

 

=ここで言う男性は、ジェンダー(社会的)のこと。セックス(生物的)のことではない。=

 

従って、男性達は現在の1問につき1答形式のデジタル的世界は大好き。そのわかりやすさが安心できる。目標の明確さがやる気のモチベーションにもなる。答え(情報)を多く集めることで他人と優劣を競う。その競争もわかりやすい。

反対に苦手なのは、あちこちに解決不能な灰色の問いを散りばめた、アナログの世界。答えの出ない問いに向き合う忍耐力の乏しさが、ますます灰色を嫌悪する。がまんならない。

 

・・・なんて集まった男性達(父親達)を突き放して、みんなを悄然とさせることは、勿論本来の目的ではない。

 

ここで、「父親学習会」の意義にもどる。

「雪合戦」「ハンター」は、答えが用意されていない活動。その時、その場で瞬時に自分で決めるという判断力が求められる。

さらに、うまくやるために、成功体験を得るために、その活動自体を計算しても、情報を集めても、必ずしも、そうなるとは限らない。不確定要素が多い。数多くやれば経験知は向上するが、やはり絶対ではない。

ところが「自分で決める」「判断力」は、人間にとって生きていく上でとても大切な資質になる。そして、それらを学ぶのは学校の「座学」ではない。また、決められた仕事を繰り返すだけの「経験の量」でもない。

それらの資質は、どこで身につくのか、どのような活動がそれを可能にしてくれるのか、それが知りたいところだが、それもまた2階の教具室でのレクチャーで教えられるものではない。

まず「やってみなければわからない」ということだ。それで朝一番の「雪合戦」「ハンター」となったわけだ。

 

「やってみなければわからない」というのも無責任な言い訳のようだが、子育てはまったくその通り。それまでにどれほど見ていても、聞いていても、知っていても、実際は思ったようにはいかない。計算どおりにはいかない。まさしく、灰色の不確定だらけのアナログ世界なのだ。

 

今日の「父親学習会」の目的は、まず「それに気づくこと、その事実をまっすぐに受け入れることにある。そして、「雪合戦」「ハンター」は、自分の思ったようにはならなかったかもしれないが、とにかくおもしろかった。それは、全員が納得できる。共有できる。即ち、子育ても同じこと。そういうものだと思う。

ジェンダーフリーの時代に、「父親の子育て」なんて野暮なことは言いたくないが、やはり父親ならではの子育てはあると思う。

今日のこの経験をひとつのきっかけにしてくれればうれしい。誰かと比べるのでない、心を開いて、自分だけのオンリーワンの子育てを目指して欲しい。

2025/07/14