抱きグセ
抱きグセ
「抱きグセがつくからいつでも抱いてはだめよ!」と、先輩の母親が若い母親に教えます。「それじゃ、いつ抱いたらいいの?」と、戸惑いながら若い母親が聞き返します。「遊んでいるときはいいけど、食事をするとき、トイレに行くときはダメと決めて歩かせた方がいいよ」と、先輩は歯切れがいい。
「わかった、ありがとう」と聞いてはみたものの、子どもと向き合うとそう簡単にはいかない。両手を伸ばして、「抱っこポーズ」で、抱っこを求める子どもは、時や状況を判断して、親の望み通りにはなりません。抱っこをせがんでいるときに、食事の時だからとか、トイレの時だからと、自分で歩かせようとしても、両手で母親にしがみついて、足をたたんでしまって歩こうとしない。無理に歩かせようとすると、引きずる格好になってしまって、大騒ぎになります。結局、母親は子どもに振り回されて困ってしまいます。
先輩はどうしているのかと見ると、上手に子どもを扱います。遊んでいるときには、にこやかに抱っこをしますが、食事やトイレの時には、「抱っこできません」と、きっぱり拒否しています。
子どももそれがよくわかっていて、ちゃんということを聞きます。
「やっぱり先輩は違うね。私はとてもあんなふうにきっぱりできない」と、若い母親は、ちょっと自信を無くしてしまいます。
しかし、よく見ると、なるほど先輩母親の言うことはよく聞くのですが、きっぱりと拒否されたときに子どもの表情には、「あきらめ」が見て取れます。「これ以上求めても無理だ」というあきらめです。このままでは宿題が残ってしまいます。「母親に対してあきらめている子どもの気持ち」をどうするかという宿題です。子どもはいつも親を信頼して、命を守ってもらい、寄り添ってきます。
親と子どもの大切な信頼関係を維持していくためには、子どもの求めには、いつでもどこでも応えてやらなければなりません。そのことを考えると、「親に対するあきらめ」は、子どもが親から離れてしまうことにつながると思います。
しかし、一方で「いつでもどこでも求めに応じる」ということでは、「抱きグセがつく」「きちんとした躾にならない」という声が聞こえてきます。
それは違うと思います(ここはきっぱりとしておきましょう)。「きちんとした躾」は、親を信頼してそばに寄ってくる子どもと一緒になって身に着けていくものです。親と距離のある子どもには、本来の意味のある「躾」は教えることはできません。
それではどうしたらいいのでしょう。
まず、最初の「抱きグセがつく」というのは、本当でしょうか?小さな子どもを育てている途中で、よく言われるし、よく聞きます。でも、これって本当でしょうか?私は、子どもの求めに応じて、いつでもどこでも思い切り子どもを抱いても、「抱きグセ」なんかつかないと思います。
そのことにはきちんとした理由があります。今月のカナカナ学習会で、そのことをお話しします。そして、子どもを抱くことについての答えを考えます。
2011/10/11