CHILD LIBRARY 子どもライブラリー

「味方」かどうか・・・

 コロナ感染症対策として、皆さんから提出していただいた運動会の参加者名簿がまだ手許に保管されています。今週のカナカナ学習会が終わり、来週には何事もなくシュレッダーを通せることを祈っています。(2週間の保持期間が満了します。)

 先日25日に、私はリモートビデオの撮影を園舎内で行いました。この時期、この状況ですので、遠方への講演旅行は控えています。

 石川県は2年越しの依頼でしたので、どうしても受けねばならない大きな大会です。そこで実行委員の先生方と相談の上、講義内容を録画してDVDに編集してスクリーン映写講義とするとなったわけです。

 ビデオ撮影はカメラだけですので、感覚が違います。急遽グループ園から30名ほどの職員が受講者替わりにと、協力してかけつけてくれました。

 撮影は気を遣いました。光や音、白板の使用方法、移動のタイミングと、演出が必要です。演出には、より効果的に盛り上げるため、より臨場感を引き出すため、よりリアル観を生み出すため、といろいろな目的があります。

 演者が演出を兼ねるむつかしさを思いながら、100分間の講義撮影は完了して、現在編集中です。

 

 さて、先日の運動会の演出はどうだったかと振り返っています。子どもライブラリーの運動会は、多くの人が出たり入ったりと、とても忙しい。殆どがその日1回限りの本番状態です。この状況では、演出はとてもむつかしい。入場門だけでなく、退場門からも入場するという工夫はあっても、あらかじめの練習はできない、やってみなければわからないということばかり・・・。

 こういう時は、下手な演出は考えない方がいい。人の流れを止めず、人の動きを信じて生き生きとダイナミックに進行することを考えればよいと学びました。

 その時大切なことは、企画・運営する先生達にとって、子どもが「味方」かどうかということです。どれだけすばらしい企画内容であっても、先生だけが突っ走って、後ろを振り返ると「子どもが付いてきていなかった」ということでは、空回り、企画倒れです。

 先生と子どもが一体となって、その周囲に多くの大人が集まってきて、より大きな輪が広がってはじめて、運動会で企画したことが生きてくるのだと思います。

 オープニングの体操は、そういう意味で「ありがとうの輪」(絢香作曲)に振り付けをしました。プログラム1番は緊張感のある運動会のスタートになる予定でしたが、実際は体操が終わった瞬間、おじいさん、おばあさんが笑い転げて、「よくやった」「うまくできた」とお互いを讃え合って、大騒ぎ、とても緊張感のあるスタートとは・・・。

 しかし、確かに笑いの輪は広がりました。その中心で同じようにニコニコ笑ってリラックスしている子ども達がいました。多くの大人に守られ、屈託のない楽しい笑いの世界を共有できて、不必要に背伸びして固くならない子ども達は何と幸福だろうと、私は本部席の前で安心して見ていました。その後の展開は、皆さんご覧になった通り。どの競技も目を離せない、おもしろおかしい運動会が続きました。まさしく演出のいらない、演出を越えたドラマの連続でした。小さな子どもが知らないオッサン達にすごいスピードで抱きかかえられて走る。(青大将競技)でも誰も泣かない。イヤがらない。怖がらない。そして、ワクワクして自分の番を待っている。大人が子どもを守り、子どもが大人の「味方」になっているからできることでした。もし子どもが「味方」でなかったら、大人を怖がり、大人を避け、イヤがり、顔を歪めることでしょう。その様子は、周りで応援している多くの大人にとっては見ていられません。共感できません。眉をひそめることになります。

 

 視点を変えます。

 日常生活の中で、子どもは皆さんの「味方」でしょうか? おとうさん、おかあさんの都合に協力してくれていますか? 「言うことを聞かない」子どもになっていないでしょうか?

おとうさん、おかあさんの都合を理解せず、言うことを聞かない子どもは、あなたの「味方」ではありません。子どもの反発は緊張を生み出し、親子関係は気まずくなるばかり。挙句大人の力で押さえつけるような子育てになってしまいます。

 「味方」の関係にあるのは、信頼です。先生と子どもが一体となって、想い、考え、行動することができるのは、何よりも信頼があるからです。子どもが大人を信頼する。そしてその何倍も大人が子どもを信頼する。その双方向の関係性の構築が求められます。そして、信頼の証しは、子どもにとっては身近な大人が人としてのあこがれであり、目標となることであり、大人にとっては子どもをリスペクト(尊敬)するという根源的な問いかけを伴います。

 結局、運動会に演出は必要ありませんでした。演出以上のリアリティにあふれたダイナミックな数々のドラマが展開されました。そして、みんなに共有された「輪」は、引き継がれていきます。

 次は「保育参観」、そして「夜のあったかクリスマス」へとインドアの活動に変わっていきます。コロナ禍対策としては、インドアは手強いです。今までのようにはいかないでしょう。皆様の忍耐と協力が必要です。でも大丈夫です。子どもライブラリーは、どんなことも挑戦して、切り拓いて、できてしまう。可能性をいっぱい持っています。なぜなら、いつもどんな状況でも、子ども達が先生の「味方」になってくれると信じられるからです。

 11月のカナカナ学習会は、運動会の裏話と顛末、そして、今後の活動の意味を丁寧にお話します。

2020/11/03