CHILD LIBRARY 子どもライブラリー

「学びの原点は日常にある」

【箱伝】
1月3日は、結婚式場で、恒例の新年恒例会でした。法人全体で8ヶ園(2014年から10ヶ園になります)役140名の職員が集まりました。私は、新年の最初のあいさつの時、その前日の箱根駅伝、往路の話をしました。いつの頃からか、箱伝にはまっています。2日は朝8時スタート。珍しく1時間以上もTVを観る忍耐力も身につきました。丁度5区の山登り、先頭は東洋大。5位の日体大は昨年に続いて服部君でした。あごを引いて黙々とストイックに走り続ける彼は、2人抜いて、3位でゴールテープを切りました。ゴールはいつも感動的です。どの選手も走り込んできて、また倒れ込むシーンに今まで何度も胸を熱くしました。
今年、その時4年生になった服部君は、ゴールした後、体に巻いてもらったタオルを外して、コースを振り返り、直立不動で深々と一礼をしました。そのような行為をする選手はほかにもいました。しかし彼の一礼は、とても冷静で力のこもったものに感じられました。その間約5秒。このわずか5秒に私はひどく心を動かされました。レースの中で、感動的なシーンはいっぱいあります。レース途中の抜きつ、抜かれつつ・・・。ゴールでのタスキ渡し、倒れ込み・・・。しかし、どの場面よりも時が止まったような涼しいあの場面が印象的でした。

【学びの原点】
私が新年恒例会で話したテーマは、「学びの原点は日常にある」『何でもない日々の保育の中から学ぶことを心がけましょう。大きく振りかぶって、騒ぐことには誰もが目も心も奪われがちです。しかし、真の学びは、何気ないちょっとした瞬間の中にあります。そのことを見逃さない感性を持って下さい・・・』というようなことでした。あの時の服部君の5秒間の行為は、私にとって何よりの学びになりました。レースとは関係ないところで見られたひとつの仕草に、4年間の彼を感じ取ることができたからです。さて、新年恒例会では、各園がゲームをしたりコーラスをしたりと、アトラクションで盛り上がります。今年コーラスは5ヶ園。私が審査員長で、優勝した園は手作りカップがもらえます。それぞれの園が、新春らしく、さわやかな歌を用意してくれました。たとえば、「いつでも夢を・・・」「雨のちハレルヤ」「やさしさに包まれたなら」・・・。
ところが、子どもライブラリーは、コーラスでなんと「リンダリンダ」を歌って踊りました。”どぶねずみ〜みたいに〜”と、低い声で歌い始めて、途中からエアギターとだラムで踊り始めました。新春の歌い始めが”どぶねずみ〜”ですから、何とも・・・。勿論、優勝カップは外しました。残念!!あたりまえです。

【夜のクリスマス会】
話はちょっと戻りますが、夜のクリスマス会は「とても良かった」と、たくさんの方のアンケートを読ませていただきました(詳細は、カナカナ通信にまとめられています)。
子ども達のきれいな歌声に、普通でない感動を受けるのは、そこに歌声だけがあったわけではないからです。しつらえられた、細やかな配慮、身のこなし、その空気を共有できる人たち、そして、その空気を作り出そうと協力してくれる人達がいてこそ届く、異次元の感動体験の領域です。
美しい歌声は、学校の音楽会やコンサートでも聴くことができます。そこに勿論感動はあります。しかし、夜のクリスマス会は、皆さんにとってそれとはまた違った感動体験ではなかったかと思います。それは、うたとは関係ないように思われる部分に細かく、丁寧な準備、段取りがあったからです。その当たり前のような設定が空気を引き締め、心地よい緊張感を生み出します。
感想アンケートの中に、「砂や埃で汚れていてもおかしくない下駄箱、玄関先ほか、とてもきれいでびっくりしました。」とかかれていました。私は、「細かいところまでよく見てらっしゃるなぁ」と感心し、「そこまで見ていただけたらやりがいあるなぁ」と嬉しくなりました。
私達は、いつも日常生活の中のどこにでもありそうなことが、本当はとても大切だということを心に戒めながら仕事をしています。何でもないことを大切に扱うことで緊張感が維持されます。研ぎ澄まされたその生活の中から、豊かな感性が育まれます。自分のしたいことをして、大騒ぎの大雑把な生活は、ダイナミックで楽しいように見えて、残るものがありません。
私達は、子どもを育てる責任ある大人です。日々の生活の学びを思い起こし、「その瞬間」に心を留める気働きを持ちたいと思います。その意味において、夜のクリスマス会は、子どもライブラリーの子育てに対する考え方とその方法が一年分ギュッと詰まった、密度の濃い味わいのある行事になったと思います。

【子どもはつくられる】
すでに、今年度カナカナ学習会で何度もお話ししましたので、皆さんおわかりだと思います。豊かな感性を持った、心のバランスの良い子どもは、生活の中で「つくられる」ということです。子ども達は、いろいろな課題をこなし、教えられますが、圧倒的に多くの時間を「生活」として過ごしています。教えられること、できることで、子どもを競って育ててもうまくいきません。時間と場所とを設定して、教えられることには限界があります。それを受け止める受け皿となる生活そのものに、力強い育ちの秘密があります。
ライブラリーの日常は、常に子どもに「自己管理」と「自己責任」を求めます。その方法は、直接ガミガミと厳しく言うのではない間接教育の手法を採っています。ですから、子どもが抑圧されず、のびのびとしていながら、きちんとやるべきことをやり、大人の話を聞くことのできる子どもに育ちます。間接教育の方法は、「見て」「聞いて」だけでわかるものではありません。子どもライブラリーの教育を説明するむつかしさがここにあります。
しかし、夜のクリスマス会のように皆さんと一緒になって作り上げ、一緒になって経験していただくとよくわかると思います。
「学びの原点は日常にある」という言葉には、大きな意味があります。これからも、ライブラリーの行事や生活を通して、そのことを一緒に考えたいと思います。

2014/01/21