CHILD LIBRARY 子どもライブラリー

「美しさ」とは?

今年は、久しぶりに、欠かさず子ども達のバレエを引率して、指導をしています。忙しくて、しばらく離れていましたが、やはり真近に子どもの個性や変化を見ることができるのは、とてもおもしろいです。
バレエのレッスンは、小さな子どもにとっては、厄介です。子どもの言葉を借りれば「意味がわからん」ということです。テキストと目標がありませんので、自分で考えなくてはなりません。筋肉の動きを探りながら、意識をそこに働かせないと、全く手も足も出ません。子どもには、これは厳しい課題です。
それを乗り越えていくには、?見る力を高める。?忍耐して考える。?イメージをはっきりさせる。?さらに見て、考える。  とプロセスを辿っていきます。私は、体の動きをよく見せることと、子どもの心の動きを助けます。特に、「忍耐する」ことを教えます。この力は、すべてに必要な意味のある力です。知も体も、能力が高くても忍耐できない子どもは、ある一定のレベルでとまってしまいます。
それにしてもと思います。昨今は、「意味のわからん」ことを、自分の課題として、粘り強く向き合って、努力していくという、まっすぐな子どもや大人が少なくなりました。すぐに意味を知りたがる、簡単に答えを調べて、手許に置いて安心したがる。こんな安直な、学習や生活が多すぎです。他人の目が気になるからでしょう。自分に自信がないからでしょう。
バレエは、体操などの難度を競うスポーツとは違って、ひたすら求められるのは、「美しさ」だけです。これは、感性の問題ですから、主観的な要素が多く、客観的な評価はむつかしいものです。「美しさ」を求めるのは、内面の求道者のようなもので、用意されている答えを出すわけではありません。自分との闘いです。自らが、答えを導き出さねばなりません。子ども達には、それを教えたいと考えています。

話は変わりますが、夏といえば、新聞にダイエットの広告があふれています。広告で見る「使用前」の写真は、なぜか裸足で、両足をひらいて、地味なスクール水着で、正面の仁王立ち。「使用後」の写真は、ヒールをはいて、斜めのポーズの立ち姿で笑顔。カラフルで派手な水着にお化粧もバッチリ。ズルいなぁと思います。それでもなお、「使用後」を信じる人が多いのには、感心します。
しかし、私の目から見れば、細いだけが美しいとは、とても思えません。きちんと体を支えて、肉や筋肉がついて、バランスが安定していることが重要です。まして、出産後の女性は、育児のために体にたくわえがあり、たくましいものです。子どもが安心してヒョイと抱えられる姿を見ていると、美しいというより、輝いていると感じます。でも、それを美しいとするのは、単に私の「主観」であって、多くの眼は、違うものを求めているのかもしれません。その眼を意識し、「美しさ」を求める方向も違ってくるのでしょう。
ということは、よく考えてみれば、客観性も、集まる主観によって、作られるということで、実際はあてはまらないということです。そんな適当に作られた眼の集まりに振り回されて、お金を使い、心を消費させるのは、遠慮したいと考えます。
最初に書きました。「美しさ」は、用意されている答えを導き出すものではなく、ひたすら、内面において、自分の努力で求め続けるものだと・・・。子どもには、あらゆる分野において、そのことを教えたいと思います。そして、他人の眼に振り回されず、自分自身を信じられるように育てたいです。

2013/07/08