もっと深く考える =「想定外」と「けんか」=
もっと深く考える =「想定外」と「けんか」=
「のびのび元気いっぱい」が自慢の保育園があります。子どもたちが屈託なく明るいのは、大人も元気になります。いいですよね。
その園の園長の相談です。
「子どもたちは素直で、明るく元気いっぱいなのですが、お部屋に入った後も元気があふれすぎるんです。落ち着かないんです。どうしたら落ち着いたクラスにすることができるでしょうか?」
これは困りました。園長の気持ちはわかります。目指すものも理解できます。しかし、このことへの答えは簡単ではありません。「お部屋の中では静かにしよう」というのは、そのことだけを子どもに教えることはできないからです。
部屋の中で静かにすることを、小さな子どもに求めるのは無理なことではありません。子どもは、言えばちゃんとわかるし、そうすることもできるようになります。解決の道筋はあります。しかし、私が今から言おうとする考え方は、その園長先生には想定外です。それが、話をややこしくしてしまいます。
子どもライブラリーでは、それほど難しい問題ではありません。道筋もよく見えています。それは、私たちの保育がある意味では、一般的な想定外のことも予測してより大きな見通しを持った保育を実践しているからだと言えます。
この場合の解決の答えは簡単です。「子どもがクラスの中で落ち着かないのは、戸外でののびのび元気いっぱいの遊びに偏りがある」からです。つまり、のびのびのように見えていても、決してのびのびではないということ。元気一杯は、単に暴走しているということとなります。
さて、ここからが厄介です。「のびのび元気一杯」が、その園の「良いところ」「自慢のところ」なのに、その良いところを見直せというわけですから。そこに問題があるという考え方は、わかりにくいものです。それは、想定外なのです。
しかし、そこから始めないと、この話は解決しません。そして、そこから始めると、必ず解決の糸口が見えてきます。園長先生に相談の返事をしなければならないのですが、想定外の発想をわかってもらえるかどうか。
もうひとつ、同じことですが・・・・。
子どもがけんかをしています。大騒ぎして泣いています。先生が間に入って話を聞いています。「とった、とられた」の類のことなのでしょう。やがて、仲直りして二人並んで座っています。けんかは子どもの成長にとってとても大切な経験です。相手の気持ちを理解することで社会性を育てるという貴重な場とも言えます。しかし、私は、最近の子どもの「けんか」が、どうも違うと感じています。私は、「けんか」の必要性はわかりますが、それでもどうもおかしいと思っています。
私は、先ほどの二人にこう言いました。
「もうけんかは終わりましたか?」二人は顔を見合わせ、ニッコリしています。
「それでは聞きますが、10分前のあの大騒ぎは何ですか?泣いて、怒って、けんかではなかったのですか?でも、もう仲直りしている。けんかをするなら、心を込めて何日でもしなさい。10分で仲直りするようなけんかで、まわりに迷惑をかけて、先生に心配させるのはやめてくれます。サザエさんのカツオと中島君は、絶交すると3日でも口をきかない。けんかというのは、力が要ります。強い気持ちがいります。10分ですむようなけんかはまわりに迷惑なだけです。」
二人の子どもは、困った顔をしています。なんとも乱暴な園長です。仲直りしている子どもを突き放すのですから。
子育てが目に見えて簡単なものになっていると思います。表面的な方法論や、建前の形にとらわれすぎていると思います。子どもたちには、もっと深くかかわりましょう。そして、深い人間性を磨く手伝いをしましょう。
2011/12/06