CHILD LIBRARY 子どもライブラリー

先生と保護者の関係とは?

 

ある日の夕方、私のケイタイが鳴りました。グループ園の園長ですが、かなりの剣幕で保護者からお叱りの電話があったということでした。

「1カ月間、連絡ノートに何も書いていない。その日子どもが何をしたか?誰とあそんだか?何を食べたか?トイレはどうだったか?ということについて、何も教えてくれない。一体どうなっているのか?私の以前勤めていた園では、毎日親に丁寧にその日の出来事を連絡ノートに書いて伝えていた。この園の先生は、仕事をしているのか?しかも、子どもが毎日のようにケガをして帰っているのに一言の説明もない。おわびもない。親は保育料を払っている。先生は、伝えたり説明したりの義務があるでしょう!!」

まず、結論を先に書いておきます。

この園では、連絡ノートは乳児は別として、親と先生の交換ノートになってはいけない。いつも子どもを真ん中に置いて考えるということから、必修アイテムではなく、希望者のみ購入している。さらに使用に関しては、親が必要な時に記入して、それについては必ず返事を書く。通常問題がなければ使用はしない。その労力から解放された先生は、もっと子どもと関わる時間を持てる。子どもの日常行動については、親と先生が直接会話でやりとりする。と最初の重要事項の説明の中で、お話してあります。

また毎日のように子どもがケガをして帰ってくることについて、そのクラスの先生達に確認したところ、それはありえないということ、もしケガが発生すれば必ず保護者に報告する。今までもずっとそうしてきた。この子どもについては、アトピーがひどく、よく体のあちこちを痒さのためひっかく。小さな傷は、日常からよく見られていた。それをケガとするなら確かに毎日のように何らかの傷は見られていた。

 

・・・とまあいろいろ冷静に考えると答えは出るのですが・・・。

しかし、その前に親と先生の話し合える信頼関係が築けていないことが気になります。この関係性がなければ、お互いの立場を言い合うばかりで、折り合えるところを見つけるのはむつかしいでしょう。「親は保育料を払っているんだから、先生は報告する義務があるでしょう」と問い詰められると、先生は「私達は、親の方を向いて顔色を伺って仕事をしているわけではありません。子どもの気持ちを考えて、子どもに寄り添って仕事をしています」と言い返すでしょう。こうなると火に油状態で、ますますヒートアップしてしまいます。

お互い節度が必要です。

いずれにしても、このやり取りが全国で増えました。その根底にあるのは、待機児童対策として発展している保育園・幼稚園・こども園のサービス産業化の流れでしょう。親のニーズに応えるとして、安全・安心な園経営が求められるようになりました。「親が求め、園が応える」という一方向の図式が定着してしまっています。

~これは違います。子育ては、双方向の関係性の中で営まれる行為です。~

 

私は、いろいろな考えや方法があっていいと認めますが、次の2点は譲れません。

①主たる保育者は親であること

②子どもの主体的な育ちを応援する。そのために、大人は「できること、できないこと」「してやりたいこと、してはいけないこと」の見極めをしっかりとすること。

それをふまえて、私達保育者は、保育の理念や目標をしっかりと具体的に保護者に伝える。説明する責任があります。連絡ノートの扱いについても、子どもの日常の情報交換についても、勿論ケガの報告についても、考え方とその具体的な行動について納得してもらえるまで言葉を尽くして丁寧に話す必要があります。

そして、保護者はその説明をまっすぐに聞く責任があります。また、我子を親以外の多くの人たちに「育ててもらっている」という広い視点も必要です。お互いの立場からの要求や言い訳は、決して次につながるものにはなりません。子どもを真ん中に置いて、ひとつ深呼吸してという冷静さと余裕が、昨今ますます失われていることを心配しています。

2016/07/22