CHILD LIBRARY 子どもライブラリー

夏は子どもの天国だ

「子どもたちが汗をかかないんですよ。早目に除湿だけでもエアコン使ってもいいですか?」と、ねんねこ組の先生が困り顔で言ってきた。6月下旬のことだ。

すでに、新聞・TVでは「こまめに水分補給、適度にエアコン使用」を情宣している。熱中症への対処法としては理解できるが、根本的な解決方法にはならない。

私の著書『親のねがい。保育者のことば。』のP74~P89に書いた「子どもの夏の過ごし方」を侮ってはいけない。基礎体力こそが究極の熱中症対策になる。

 

子どもは基本的に「汗掻き」だ。いつもじっとりしている。抱き上げるとこちら側にもベッタリと汗がはりついてくる。これが健康の証だ。じっとりとぬれているから、皮膚を守ってくれる。また、汗を掻くから体温調節ができる。 熱が体にこもらない。発散できる。そのためには、皮膚の汗腺がひらいていなければならない。その準備は、すでに2月頃から始まっている。寒い時でも汗は掻く。ただし、この時は自ら体を動かして体の内部を燃焼させる必要がある。2月の運動による汗は、夏の熱中症対策の準備と言える。

以上は、ちょっとした豆知識。皆さんよくご存知だ。スマホ検索ですぐに得られる情報だ。・・・にしても、汗を掻く大切さがわかっていても、実際の子どもが汗をかかないのは何故だろう?

 

「生活の質を落としたくないから」というのが、どうやら本音のようだ。汗と付き合うのには、不快が伴う。汗まみれの子どもを抱くと、当然自分も汗まみれになる。洋服も汚れる。また、汗はカビが繁殖すると臭う。この臭いが不快感を増幅させる。ベトベトはどうも苦手だという人は、「サラサラ」を求める。この「サラサラ」があちこちでベトベトを駆逐して増えている。(まるでアブラゼミを駆逐するクマゼミのようだ)

夏の定番の暑さ、直射熱、汗、臭、虫などに対する「耐性」が弱くなっている。「日焼け防止」「汗をおさえる」「臭いを消す」「虫をよける」さまざまな製品が街にあふれている。人々の耐性を弱める理由がここにもある。現代の夏の生活の質は、「サラサラ」に守られ、「サラサラ」の追求の上に成り立っている。

しかし、どう考えてもその生活の質は脆い。多くの人が必死になって夏のグッズをこれでもかというぐらい揃えて、かろうじて守っているのは、痛々しく見える。

あっさりあきらめたらどうだろう。夏は暑いもの。日に焼ける。汗を掻くもの。虫にさされるもの。このあたりまえをあっさり認めてはいかがだろう。ここに子どもの健康な姿があることにも注目したい。夏のあたりまえを受け入れると、別の「生活の質」が見えてくる。これは、足腰がしっかりしている。脆弱ではない。必死に守る必要もない。「受け入れて工夫すればいい」だけである。

 

個人的なことだが、我家は夏もほぼエアコンを使うことがない。風通しが良いとも言えるが、暑い時の流れる汗の心地良さが捨てがたいからだ。帰宅後、汗びっしょりの体にシャワーをする。少しばかりの風を求めて、場所を移動して冷たいビールを飲む。再び汗がふき出すが、これはたまらない快感だ。エアコン完備の汗も出ない室内で飲むビーとは、格段に味が違う。ビールを飲まない方には申し訳ない話だが、冷たい麦茶で付き合っていただいても、快感は変わらないと思う。

額に汗を浮かべた子どもたちとにぎやかな食事も、夏の風情のひとつだ。食事のあともう一回みんなで風呂に飛び込むのも楽しい。

夏の果物は汗を掻きながらみんなで食べる。涼しい部屋でひとりで食べても旨くない。

夏の夜は寝苦しい。少しばかりの外気を求めてサッシにはりつくように寝場所を替える。風を得ることができた時の満足感、喜びは、地味にうれしい。相当に得をした気になる。しかし、それも長く続かず、また風を求めて場所を替えて部屋の中をウロウロ。2階はいけない。昼の熱気と1階の照明の熱量がこもって熱い。

まぁ寝不足にはなるが、寝不足も3日続くとがまんできなくなって熟睡できる。「あきらめて受け入れる」のが極意。これが夏というものだ。

 

夏はいつから「脆弱な生活の質」を守るために嫌われる対象になったのだろう。夏は子どもの天国だ。どの場面を切り取っても、生きている喜びにあふれている。実感できる。

でも、最近の暑さが異常で酷暑であることは考えておこう。適度にということも必要なことだ。準備なく突然の方向転換も危険を伴う。以前、イスタンブールで経験した暑さは「死ぬかも」と思ったほどだった。暑さをナメてはいけない。それでも守るべき「質」の勘違いは避けたい。まっすぐに夏に向き合うことが大切だ。

今年の夏は、子どもの汗と付き合いながらあきらめて「受け入れて工夫する」とされてはいかがだろう。きっと新しい世界が見えてくると思う。

2022/07/19