CHILD LIBRARY 子どもライブラリー

「時を経て」気づくこと・・・。

「断乳」をいつ?どのようにするのか?から始まって、トイレトレーニング、食事の躾、睡眠と、子どもを育てる過程でどの母親(主に)も通過しなければならないハードルがあります。厄介なことにそのハードルには「これだ!!」という正解が用意されていません。また、ちょっとずつ形も向きも高さも違うので、どのように飛び越えていったらいいのか、コーチや同僚の意見は参考になりますが、ピタッとくるものではありません。結局自分で考えて、工夫して、飛び越えなければなりません。ちょっとくらいひっかかっても、ハードルをたおしても、時にはハードルをかわして横からすり抜けることもあります。私も「正解」を教えることのできない力不足のコーチですが、子育て真っ最中の皆さんに、ひとつ、ふたつ、ハードルを越えるための心構えをアドバイスします。

 

1.答えがないということは、正解は自分にまかされているということ、簡単に言えば「あなたのやり方が正解」と認められているということです。なぞる必要はありません。「文句あるか!!」と、堂々と自分自身の子育てを貫きましょう。

 

2.さらに、ハードルに例えましたが、このハードルは「子どもという生き物」です。従って、親がどんなに周到に準備しても、勝手に向きを変えたり、勝手に歩き出したり、勝手にしゃがんだり伸びたり、高さを変えたりもします。ということは、相手(ハードル)に合わせて方法も微妙に変わります。誰かの子育てをなぞることは必要ないですが、生きているハードルとのコミュニケーションは欠かせません。自分で一方的に決めてしまわないで、相手に合わせた飛び越え方の思案こそが、求められることになります。

 

ある園でのことです。このような子育ての現実の細かな質疑応答をしながら、若い母親、父親の悩みや考え方を聞くのは、私には楽しい時間でした。

その中で、印象に残ったひとりの母親の言葉が心に残りました。『育休明けの仕事の時期が近づいてきました。まだ母乳を飲んでいたので、いつ、どのように断乳させるかを考えていました。ある日、おっぱいを飲んでいた子どもに、「おかあさん、おっぱいを飲まれるとすごーくおっぱいが痛いので、もうやめようね」と、子どもに言いました。子どもは欲しがり、泣きながら眠る夜もありましたが、何とか仕事復帰までに断乳は成功しました。それから2年たって、ある日、子どもが熱を出して保育園を休みました。母親も仕事を休んで看病。その時、添い寝をしていると、うつらうつらしながら子どもがおっぱいを探って求めます。珍しいなと思いながら好きにさせていると、途中で子どもが「ハッ」と気づいて母親の顔を見上げてこう言ったのです。「おかあさん、ごめん。おっぱいいたかった?」その一言は、母親の胸に刺さったそうです。』

私は、良い話を聞かせてもらったと嬉しかったです。子育ては、「子どもという生き物」を育てます。先程の1と2を踏まえて、時を経て子育ての主体となる母(父)と子に、目の覚めるような心の交流や気付き、発見があります。その発見を通して、再び親子の絆が強くなっていくのでしょう。「時を経て」というのは、すばらしいと思います。それは、今日傷ついたことが、時を経て、愛に変わるということがあるということ、今日けんけしたことが友情になり、今日うんざりしたことが愛おしさに変わるということです。

子どもを育てる時、向き合う時、目の前のハードルに捉われすぎないで、時の流れを想像して飛び越え方を工夫してみてください。

2015/10/02