運動会キライ
「運動会キライ」という子どもはいると思います。
「一番になることが大事なんじゃない。がんばることが大切なんだよ」と教える大人のキレイ事を、胡散臭く感じている子どももいるでしょう。
今号は、これらの子どもの本音を考えます。
私は、行事をする以上、全員が楽しめる、やりきった達成感を経験するのでなければ承知できません。そのために、しなければならないことは、子どもに飽きるほどしつこく教えたり、一方的に頑張らせたり、子どもがあきらめて、従うような厳しい練習をすることではありません。
私達のすることは、「運動会キライ」という子どもの理由「どうして?」を多面的に、冷静に、突きつめることであり、大人のキレイ事やその場しのぎの慰めをとことん取り除いて、まっすぐに子どもと向き合い、一緒に汗を流すことだと考えています。
私は、「練習のための練習をするな」と、先生達をよく叱ります。競技を作るための練習をしてはならないということです。子どもライブラリーの子ども達は、とても賢く、9月まで育っています。見る、聞く力は、4月に比べて、飛躍的にどのクラスも伸びています。競技は、部屋の中で図を交えながら、わかりやすい説明で充分理解できます。自分達のするべきことのイメージをちゃんと持つことができます。従って、園庭や公園の練習は、競技を作ることではなく、ひとりひとりの子どもの競技への理解度、イメージの持ち方を確認し、うまくいかない子どもを再確認したり、勘違いしている子を修正したり、イメージが持ちきれない子どもに言葉を補ったりすることなのです。
従って、先生の役割は、とても大切です。競技を仕上げるという先生側の課題をこなしながら、ひとりひとりの子どもから絶対に目を離してはいけません。子どもが、自信を持ってしているところ、楽しんでいるところ、迷っているところ、困っているところを、きちんと把握しなければなりません。そのことに共感したり、指導したりしなければなりません。しかも、子どもの自尊心を守ることを考えると、その関わりは、すぐその場であったり、しばらくあとだったりします。その「みきわめ」もまた大切です。
子どもライブラリーの運動会の練習は、子どもでなく先生たちにとって、このように体も心も使ったとてもハードなものになります。しkし、皆さんご存知のように、「だからあのような運動会のができる」ということになります。全員での講演練習は、たった2〜3回のみ。数を重ねることは、単に先生の安心材料を増やすだけで、子どもは「またか」とうんざりするだけです。要は、質の問題です。先生たちが、ひとりひとりの子どもに課題を持ってきちんと臨めば、意味のある充実した練習ができます。歴代の役員さんがおっしゃいます。「運動会の手伝いに行って、練習がこんなにおもしろくて、意味のあることなんだとよくわかりました」
本番は結果ですから、子どもに任せましょう。私達のするべきことは、それまでにあるのです。
さて、最初に書いたことに答えを出しておきます。大人のキレイ事については、もうおわかりでしょう。子どもを一緒に汗を流すことです。
「運動会キライ」という子どもをどうするかということです。
私は、全員が楽しめて、達成感が残るものにしたいと書きました。だから、絶対にキライが好きになっていただきます。ただ、そのためには、「キライ」な子どもの理由を知らねばなりません。この時に大事なことは、「好み」の問題は受け付けないということです。
では、何を受け付けるのか?
「キライ」という子どもは、運動会の理解ができていません。競技のイメージがあやふやです。それは、見る力、聞く力が、まだ充分に育っていないからです。子どものせいにするわけではありません。「子どもはつくられる」と、何度もカナカナ学習会で話しました。「キライ」の子どもは、力が育っていないのです。「つくられ方」が歪んでいるのです。そのことに、私達は向き合います。
「運動会キライ」にもいろいろありますが、それを考えるときは、その子どもができないことは、一切触れません。伸び伸びと開放的空間の中で、力を育てるチャンスを探します。小さな子どもは、体を動かすことは基本席に好きです。ということは、見えていない、聞こえていない、そして、意味がわからない苦しさがどこにあるのかを発見して、そのことを援けることで、子どもはどんどん自信をつけて変わっていきます。運動会を通して、子どもをよりよく育てたいと考えています。そして「運動会スキ」と言ってほしいです。
もう一度繰り返します。運動会のでき具合は、結果です。そのことにこだわったことは、一度もありません。それまでのプロセスとそのあとの育ちにつながるものこそが、大切なのです。
すべては、大人次第です。どうぞ会場に応援に来られる保護者と、その関係者にお願いします。子どもに興味、関心をもって、好意的な育てる雰囲気を、会場に作り出してください。そしてもうひとつ、自分の子どもだけでなく、「よその子ども」も可愛いなぁと応援してやってください。大人も子どもも、会場が一体となれるすばらしい運動会にしましょう。
2013/10/04