P(ピアノ)PP(ピアニッシモ)の秘密
土曜日の朝、教具室から歌声が聴こえる。長く声楽を勉強している市村先生がゲスト出演。(丸太っ子クラブの絵画教室の日、在園児もコンサートに呼んでいただきました。)
終わって、事務所に来てくれました。
「ホント久しぶりだね。とうとうわたし、後期高齢者になったのよ。」
「75歳? とても・・・? 若いよね。」と、笑って聞く。
「でも、ライブラリーの子ども達変わらないね。歌を聴いてくれていて、P(ピアノ)PP(ピアニッシモ)になると、ピーンと空気が変わるのよ。ビックリしたわ。普通子ども達に歌って聴かせてる時、そんなことありえないから。やっぱりライブラリーの子どもはすごいよね。全然変わらないね。」と、感じたままを話してくれました。「なるほど」と、私は妙に納得。歌もそうですが、どんなことも、激しく、大きく、開放されて表現するのは、勉強して手が届く世界です。わかりやすく、こちらに伝わってくることを受け止めるのも容易です。しかし、弱く、小さく、もっと弱く、もっと小さく表現するのは、とてもむつかしい。ベテランの領域です。そして、それを受け止めるのは、もっとむつかしい。歌を聴いていたライブラリーの子ども達は、その弱さ、小ささを、一生懸命聴こう、受け止めようとして、その部分になると、ピーンとはりつめて、緊張して、空気が変わったということらしいです。
市村先生は、20年前一緒に仕事をしていた仲間です。75歳まで歌い続けるのもすごいですが、聴いている子ども達の違いがわかるのもすごいこと。それを伝えに来てくれるコミュニケーション力も、若いというしかありません。
少し振り返りますが、「夜のあったかクリスマス」の感想の中に、「ライブラリーの子ども達は、みんな元気一杯、毎日外でたくましくあそんでいるばかりと思っていたけど、こんな静かな行事に集中することもできるんですね。おどろきました。」という内容がありました。皆さん、一緒に体験していただいた通りです。
私は、ストーリーテーリングをしましたが、照明のため、子どもの表情はよく見えません。しかし、すぐ前に座って気配に集中していると、話を聞いている子どものおどろきや、おもしろさやドキドキワクワクの息づかいがよく伝わってきます。4歳児の保護者の歌もありました。実際、前で歌っていただいたおとうさん、おかあさんは、同じ息づかいを感じられたのではないでしょうか。
歌の市村先生に教えられたことから考えました。弱く、小さな世界。暗く静かな世界にも、おそれず興味、関心を持って、心を開いて、まっすぐに向き合えるのは、強く大きな世界、そして、明るく、陽気な楽しい世界をたっぷり経験してきたからだろうと思います。
その経験値の幅が広ければ広いほど、真逆の世界の経験値も深くなる。子どもの経験世界は、背中合わせになっているということでしょう。
そう思い当たると、感想の中にあった「外でたくましくあそんでいるばかり」というのは、子どもの成長にとって、とても必要な「・・・ばかり」だったということです。
子どもを小さくまとめてお利口に育てるのは、とりあえず目指しやすい子育ての目標のひとつです。しかし、とりあえずのお利口では、子どもはそれ以上にもそれ以下にもすすめず、生きる喜びまでなかなか到達できない、中途半端な寂しさを、持ち続けてしまいます。
「夜のあったかクリスマス」は、「ライブラリーの子どもは、静かに集中するという、こんなこともできるんだ」ではなく、「静かに集中できてあたりまえ」の育ちを何か月も積み重ねてきたということです。
今月のカナカナ学習会は、そんな育ちを各クラス毎にスライドショーを見ながら振り返りたいと思います。
2020/01/29